Kids

子どもの病気トラブル110番

2017/03/16

専門家が子どもの健康や発達についてお答えします!

新潟市小児科会会長

柳本 利夫先生(やぎもと小児科院長)

 

今回のテーマは「子どもの風邪薬の誤解」

子どものころは頻繁に風邪をひきます。風邪には早めの風邪薬をと思いがちですが、残念ながら風邪薬には早く治す力や予防効果は期待できません。風邪は薬の力で治るのではなく、自分の力で治っていくものです。でも、だからと言って放置しておけばよいというわけではありません。症状経過をていねいに見守り、必要な援助を続け、なぐさめたり、はげましたりしながら峠を越えるのを待ちましょう。

 

●何もできないってことですか?

高熱が続く子どもの風邪のひとつにアデノウイルス感染症があります。39度から40度くらいの高熱が5日間も続くため、看病しているご家族の不安も強くなります。座薬を使っても熱は下がらない、冷やしても熱は下がらない。まだしばらく熱が続くだろうと告げると、「この熱に…私にはなにもできないってことですか?」とママがつらそうにおっしゃいます。不安な気持ちはよくわかります。しかし峠を越えるまでは待たなければなりません。昨年はノロウイルスによる感染性胃腸炎が流行しました。吐き気が強い病初期は、吐き気止めを使っても何回も吐き、水分を与えても吐きます。脱水が心配なのに、飲めないし、吐き続けるし…「何もしてあげられないのか」と不安になります。それでも、やがて峠を越えると、しだいに吐き気はおさまっていきます。
子どもの風邪は、特に病気の初期の症状は、薬を使ってもうまく症状がおさまらない時期があります。看病しているママが無力感や不安感を感じるのは当然のことと思います。しかし、やがて時期が来るとその症状は少しずつ回復していきます。それを待つ必要があります。子どもの体の中に治る力が必ず備わっているのです。

●風が早く治る

風邪の治る時期について、興味深い研究があります。「担当した医師が自分に共感してくれている」ということと「風邪が治っていない」との関係を調査したものです。その結果、患者が医師からの共感を感じている場合には風邪が1日早く治るということがわかりました。医師の共感というのは具体的には、「患者に親しみとはげましと安心感を与え、患者の話に耳を傾け、話を聞き、心配を理解し、関心と思いやりをみせ、これからの治療方針をともに考えていく」という態度です。忙しい外来でそんな余裕はない…と言われてしまいそうですが、このことは、子どもに対する親の態度としても応用できると思うのです。親が子どもにやさしく声をかけ、子どもの訴えを聞き、大丈夫とはげますことは、子どもにとって何よりも大きな力になると思います。

●親だからこそできること

なにもできないように感じるつらい熱の時期、嘔吐が続いて不安な時期、せき込んで眠れない時期、そんな時期だからこそ親は子どものそばにいて、子どもに声をかけ、はげましたり、元気づけたりしてやることができます。子どもにとってはそれが一番の力になります。子どもが、世界中で一番信頼し、頼りにしている親だからこそできる、子どもへの勇気づけです。時期がきて峠を越える時間までの「時間薬」と親がそばにいて子どもをはげまし続ける「親薬」は医師から処方される風邪薬にまさる大切な薬です。

 

コラム「ご存知 スーパーボール」

奇麗な色でよく弾み、子どもには大人気のおもちゃです。今回は、日本小児科学会ホームページで報告されたスーパーボールによる事故例の紹介です。
3歳4ヵ月の男の子。夏祭りの「スーパーボールすくい」でスーパーボールを獲得し、家に帰って遊んでいました。父親が部屋に入ると、子どもが声も出ない状態で苦しがっているのを発見しました。父親は救急車を要請し、救急病院に搬送されました。救急病院で直径2cmのスーパーボールを器具でつまみ出し救命することができました。
3歳9ヵ月の男の子、口の中にスーパーボールを2つ入れて遊んでいました。それに気づいた母親が「危ないのでボールを出しなさい」と叱ったところ、驚いて2つのうち1つを吸い込み窒息状態となりました。母親が口の中に指を入れて出そうとしたが取り出せず救急車を要請。救急病院でのどにつまったスーパーボールは取り出されましたが、意識が回復しないまま6か月後に死亡しました。3歳児が大きく口を開けたときの口径は39mmです。窒息を防ぐためには、ボールの大きさを直径45mm以上にするか、あるいはボールに通気孔を開けるなどの危険防止のの対策を講じる必要があります。